呂氏春秋 / 孟春⑤
是月也,命樂正入學習舞。乃修祭典,命祀山林川澤,犧牲無用牝。禁止伐木,無覆巢,無殺孩蟲胎夭飛鳥,無麛無卵,無聚大眾,無置城郭,揜骼霾髊。
新字:是月也,命楽正入學習舞。乃修祭典,命祀山林川沢,犠牲無用牝。禁止伐木,無覆巣,無殺孩虫胎夭飛鳥,無麛無卵,無聚大眾,無置城郭,揜骼霾髊。
書き下し
是の月や、樂正に命じ、學に入り舞を習わしむ。乃ち祭典を修め、命じて山林川澤を祀るに、犠牲は牝を用いること無からしむ。伐木を禁止し、巣を覆すこと無く、孩蟲・胎夭・飛鳥を殺すこと無く、麛とること無く、卵とること無く、大衆を聚むること無く、城郭を置くこと無く、骼を揜い髊を霾めしむ。
現代語訳
この月には、楽官の長に命じて学校に入り舞を習わせる。祭祀の典礼を整え、山林や川沢を祀らせるが、その際いけにえに雌の獣は用いさせない。木を伐ることを禁じ、鳥の巣を壊さず、幼虫や獣の胎児・生まれたての子・飛び立ったばかりの鳥を殺さず、鹿の子をとらず、卵をとらず、大勢を動員せず、城郭を築かせず、野ざらしの白骨や肉の残った骨は埋めさせる。
解説
春という生成の季節にふさわしく、命あるものを傷つけない禁令を並べた段です。伐採を禁じ、雌のいけにえを避け、幼い虫や獣・卵まで殺さないよう命じ、大規模な動員や築城も控えさせます。春は万物が生まれ育つ時であり、この時期に生命の芽を摘めば、自然の循環そのものを損なうと考えられたからです。同時に、野ざらしの骨を埋める配慮も説かれます。ここには、季節の勢いに逆らわず、育つべきものを育てる「時に応じた抑制」の思想があります。何でも進めればよいのではなく、伸ばす時期には余計な手出しを控える——現代の組織運営や人材育成にも通じる、時機を見た自制の教えです。