韓非子 / 五蠹第四十九
夫の君の直臣は、父の暴子なり。・・・夫の父の孝子は、君の背臣なり。上下之利、若是其異也。
書き下し
夫の君の直臣は、父の暴子なり。・・・夫の父の孝子は、君の背臣なり。上下の利は、是の若く其れ異なり。
現代語訳
君主にとっての「忠臣」(父の不正を告発した子)は、父親にとっての「とんでもない子」である。・・・父親にとっての「孝行息子」(老父のために軍から逃げた兵士)は、君主にとっての「裏切り者」である。組織(上)の利益と個人(下)の利益は、このように異なるのだ。
解説
組織(上)の論理(法の遵守、職務の遂行)と、個人(下)の論理(家族愛、私的な義理)はしばしば対立する。「家族のために会社を休む」兵士(孝子)を褒めれば、組織の規律(軍)は崩壊する。「会社のために家族の不正を告発」する社員(直臣)を罰すれば、内部通報(コンプラ)は機能しなくなる。リーダーは常にこの二律背反の「利」を天秤にかける必要がある。